1990年に日本で初めての散骨が行われて以来、これが合法なのか違法なのかはいまだにはっきりとしていません。あえて表現すれば「違法でも合法でもない」ということになります。このような半端な状況が続いている理由は、散骨に対する法整備が追いついていない点にあります。まず、日本では憲法において「宗教の自由」が認められていますが、もし散骨を法律で禁止すると宗教の自由が制限されるおそれが出てきます。

埋葬と宗教というのは古来から切っても切れない関係にあるからです。では散骨を合法としてしまえばいいかというと、今度は埋葬する場所の問題が浮かび上がってきます。現在の法律では遺骨を2ミリ以下の大きさにし、土地の持ち主に許可を取れば遺骨を撒いてもいいことになっていますが、物が物だけに「どこでも」というわけにはいきません。たとえば自分の家の庭に遺骨を撒くのはもちろん違法ではありません。

けれども将来的にその土地を売る予定があるなら、次の買主にそのことを説明する義務がありますし、遺骨を撒いた土地というのを気持ちよく受け止める人もあまりいないでしょう。では山や海なら簡単なのかということですが、山はほとんどが国に所有権があるので許可をもうらうのは難しいのが現状です。一方、海は人も住んでいない上に持ち主の問題もないので比較的遺骨を撒きやすいのですが、これも海水浴場や釣り場などは常識的に避ける必要があります。つまり現時点では遺骨をどこに撒くかは個人の「良識と常識」による割合が多く、どこまでが合法かは線引きがとても難しいのです。

もし遺骨を非常識な場所に撒く人が続出すれば、近い将来法律で制限される可能性もあります。埋葬法の選択肢を減らさないためにも、これから散骨を行おうとする人は慎重に場所を選ぶ必要があるのです。